
砥上裕將さんの「線は、僕を描く」の感想を紹介!
森羅万象を水墨で描く。
水墨画家、兼小説家という異色の経歴を持つ砥上裕將さんのデビュー作。
多くのランキングにも入賞しています。
・第59回メフィスト賞受賞
・「王様のブランチBOOK大賞」2019受賞
・「2020年本屋大賞」国内編 第3位
自身の水墨に対する思いをぎっしり詰め込んだ、とても素晴らしい作品です。
今の自分に自信がなかったり、なかなか前に進めないと感じている方には、
特に響くのではないかと思います。
今回はそんな「線は、僕を描く」を感想とともに紹介します!
(内容に触れますが、結末には触れません!)
それではどうぞ!
「線は、僕を描く」砥上裕將
内容
両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。
(公式HPより)
なぜか湖山に気にいられ、その場で内弟子にされてしまう霜介。
反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけての勝負を宣言する。
水墨画とは筆先から生み出される「線」の芸術。描くのは「命」。
はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで回復していく。
そして一年後、千瑛との勝負の行方は。
感想
両親を事故で亡くしてから、自分の殻に閉じこもっている青山霜介。
友人の強引なお願いに、渋々参加した展示会設営のアルバイト先で一人の老人と出会う。
ただの人懐っこいおじいちゃんだと思い、一緒に展示を見て回っていると、
そのおじいちゃんが、実は水墨画の巨匠・篠田湖山だった。
なぜか気に入られ、普段は弟子を取らない巨匠の内弟子にされてしまう。
「私はこの若者を弟子にしようと思うんだ。私の内弟子としてね。」
(本文より)
正直なところ、ここまでの展開は、若干置いてきぼりにされそうな雰囲気を感じましたw
いくらなんでも素人がいきなり水墨化の巨匠に気に入られないだろうって。
だけど、そこはフィクション。
この状況を飲み込んで、先に進むと、とても素晴らしい景色が待っています。
水墨画という、やり直しのきかない、失敗できない一発勝負の芸術。
その緊張感や、水墨画に向き合う真剣さが胸に刺さる。
白い紙に、黒の墨だけで世界を展開していく美しさ。
水墨画という芸術を、豊かな表現で描き、とても魅力的に、みずみずしく描かれています。
「線」に込められた思い、表現することの難しさ、向き合うことの大変さ、美しさの裏に隠れた厳しい世界も見どころの一つです。
この作品で描かれるのは水墨画だけではありません。
水墨画を通して、今生きているこの世界、人間の本質に迫っています。
「自分の視野や想像の外側にある場所にたどり着くためには、とにかく歩き出して、何度も立ち止まって考えて、進み続けなければならない。」
(本文より)
このセリフにすごく力をもらいました!
読後、今ある日常に感謝し、この世界が美しいもので溢れている幸せに気付かされます。
ちょっと視野が広がった気になりました(気のせいかな?!)
そして、自分自身と向き合うことの大事さも感じられました。
水墨画という芸術を通して、これだけのことを表現できるって、素直に驚き、感動しました。
Youtubeには、水墨画を描く動画もあるので、読み終わったあとに見てみると面白いです。
私はソッコーで見ました!
おわりに
いかがでしたでしょうか?
水墨画なんてわからないよ、興味ないよって方も楽しめる作品になっています。
(私がそうだったので、間違いないです!)
ぜひ手に取って、今まで知らなかった世界を体験してみてください。
本選びの参考にしていただけたら嬉しいです!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
コメント